GLOSSARY

M&A用語集

事業承継・M&Aで使われる用語を96語、分類別にやさしく解説します。

基礎

M&Aえむあんどえー

Mergers and Acquisitions の略で、企業の合併・買収の総称。中小企業では、後継者不在の解決策として第三者へ会社や事業を引き継ぐ手段として用いられる。

事業承継じぎょうしょうけい出典: 中小企業庁

経営者が会社・事業を後継者に引き継ぐこと。引き継ぐ相手により親族内承継・役員従業員承継・第三者承継(M&A)に分かれる。

第三者承継だいさんしゃしょうけい出典: 中小企業庁

親族や社員以外の社外の相手に事業を引き継ぐこと。後継者不在でも廃業を避けられ、売却対価の確保や個人保証の解除が期待できる。

親族内承継しんぞくないしょうけい

子や親族へ事業を承継する方法。経営理念を受け継ぎやすい一方、株式移転に伴う相続・贈与税が論点になる。

従業員承継じゅうぎょういんしょうけい

役員や従業員へ承継する方法(EBO/MBO)。事業に精通した人材へ託せるが、株式の買取資金や個人保証の引き継ぎが課題になりやすい。

スモールM&Aすもーるえむあんどえー

比較的小規模な企業・事業のM&A。明確な定義はないが、譲渡価格が数百万〜数億円規模の案件を指すことが多い。

売り手うりて

会社や事業を譲り渡す側(譲渡側・譲渡企業)。

買い手かいて

会社や事業を譲り受ける側(譲受側・譲受企業)。

後継者不在こうけいしゃふざい出典: 中小企業庁

事業を引き継ぐ後継者が決まっていない状態。中小企業の廃業理由の中心的要因とされる。

廃業はいぎょう

事業を停止し会社を清算すること。解散・清算には登記費用や在庫処分費用などが伴う。

黒字廃業くろじはいぎょう出典: 中小企業庁

黒字で存続可能な事業が、後継者不在等を理由に廃業すること。社会的損失として問題視されている。

ノンネームシートのんねーむしーと

社名等を伏せ、業種・地域・規模・特徴のみをまとめた匿名の案件概要。初期の打診段階で用いる。

企業概要書きぎょうがいようしょ

IM(インフォメーション・メモランダム)とも。NDA締結後に開示される、財務・事業の詳細をまとめた資料。

ネームクリアねーむくりあ

買い手候補へ売り手の実名を開示してよいか、売り手の了承を得る手続き。

ロングリストろんぐりすと

買い手(または売り手)候補を幅広く列挙した初期の候補先リスト。

ショートリストしょーとりすと

ロングリストから条件に合う候補に絞り込んだ、実際に打診する候補先リスト。

仲介ちゅうかい出典: 中小企業庁ガイドライン

売り手・買い手の双方の間に立ってM&Aの成立を支援する形態。双方から手数料を受領する構造のため利益相反への配慮が求められる。

FAふぃなんしゃるあどばいざー

Financial Advisor。売り手か買い手の一方に立って助言・交渉支援を行う専門家。

プロセス

NDAえぬでぃーえー

秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)。実名や財務など機密情報を開示する前に締結し、情報の目的外利用や漏えいを防ぐ。

意向表明書いこうひょうめいしょ

LOI。買い手が売り手に対し、買収の意思・希望価格・条件を提示する書面。通常は法的拘束力を持たない。

基本合意書きほんごういしょ

MOU。価格の目線・独占交渉権・スケジュール等を当事者間で確認する書面。独占交渉権・秘密保持等を除き拘束力を持たないのが一般的。

独占交渉権どくせんこうしょうけん

一定期間、売り手が他の買い手候補と交渉しないことを約す権利。基本合意で付与されることが多い。

デューデリジェンスでゅーでりじぇんす

DD。買い手が対象会社の財務・税務・法務・労務・事業等を精査する調査。判明した問題は価格や契約条件に反映される。

財務DDざいむでぃーでぃー

正常収益力・運転資本・純有利子負債・簿外債務等を確認する財務面の精査。

法務DDほうむでぃーでぃー

重要契約・許認可・訴訟・株式や資産の権利関係等を確認する法務面の精査。

税務DDぜいむでぃーでぃー

申告の適正性や追徴課税リスク等、税務面の精査。

労務DDろうむでぃーでぃー

未払残業代・社会保険・就業規則・キーパーソンの処遇等、人事労務面の精査。

ビジネスDDびじねすでぃーでぃー

市場・競合・収益構造・シナジー等を分析する事業面の精査。

最終契約書さいしゅうけいやくしょ

DA。法的拘束力を持つ最終合意。株式譲渡契約書(SPA)や事業譲渡契約書がこれにあたる。

表明保証ひょうめいほしょう

契約時点で一定の事実(財務の正確性・簿外債務の不存在等)が真実であると当事者が表明・保証すること。

補償条項ほしょうじょうこう

表明保証違反等で損害が生じた場合に補償する取り決め。上限額や請求期間が定められることが多い。

クロージングくろーじんぐ

対価の支払と株式・資産の移転を実行し、取引を完了させること。

クロージング条件くろーじんぐじょうけん

CP。クロージングの前提となる条件(許認可取得・重要契約の同意取得等)。

PMIぴーえむあい出典: 中小企業庁

Post Merger Integration。成約後の経営統合プロセス。承継後に価値を実現するうえで重要とされる。

キーマン条項きーまんじょうこう

事業に不可欠な人物(経営者・技術者等)の一定期間の残留・関与を条件とする取り決め。

ロックアップろっくあっぷ

売り手経営者等が成約後の一定期間、引き継ぎのため在籍・関与する約束。

アーンアウトあーんあうと

成約後の業績達成度に応じて、対価の一部を後から追加で支払う仕組み。価格目線の差を埋める手法。

競業避止義務きょうぎょうひしぎむ

売り手が一定期間・地域で同種の事業を行わないことを約す義務。買い手の事業価値を守るために設けられる。

善管注意義務ぜんかんちゅういぎむ

善良な管理者として通常期待される注意をもって職務を行う義務。アドバイザーや取締役に課される。

チェンジオブコントロール条項ちぇんじおぶこんとろーるじょうこう

COC条項。支配権の移転(株主の変更等)が生じた場合に、契約の相手方に解除権等を認める条項。M&Aで論点になりやすい。

スキーム

株式譲渡かぶしきじょうと

会社の株式を売買し、法人を丸ごと引き継ぐ手法。許認可・契約を原則そのまま承継でき手続きが簡便なため、中小M&Aの王道とされる。

事業譲渡じぎょうじょうと

会社の資産・負債・契約・従業員を個別に選んで移す手法。欲しい部分だけ承継でき簿外債務を切り離せるが、移転手続きが煩雑。

第三者割当増資だいさんしゃわりあてぞうし

特定の相手に新株を割り当てて資金を調達し、その相手が株主(買い手)となる手法。

合併がっぺい出典: 会社法

複数の会社を一つの会社に統合する手法。吸収合併と新設合併がある。

会社分割かいしゃぶんかつ出典: 会社法

会社の事業の一部を切り出して別会社に承継させる手法。吸収分割と新設分割がある。

株式交換かぶしきこうかん出典: 会社法

ある会社を完全子会社にするため、その株式を親会社の株式と交換する手法。

株式移転かぶしきいてん出典: 会社法

既存会社が新設する持株会社の完全子会社になる手法。

合弁ごうべん

複数の企業が共同で出資し新会社を設立すること(ジョイントベンチャー)。

TOBてぃーおーびー

株式公開買付。上場会社の株式を市場外で、価格・期間・株数を公告して買い集める手法。

MBOえむびーおー

Management Buyout。経営陣が自社(または事業)を買収すること。

EBOいーびーおー

Employee Buyout。従業員が自社(または事業)を買収すること。

LBOえるびーおー

Leveraged Buyout。対象会社の資産や将来CFを担保に借入を活用して買収する手法。

評価・財務

企業価値評価きぎょうかちひょうか

バリュエーション。会社や事業の価値を複数の手法で見積もること。中小M&Aでは複数手法を併用して妥当なレンジを描く。

株式価値かぶしきかち

株主に帰属する価値。事業価値(EV)から純有利子負債を差し引いて求める(株式価値=EV−ネットデット)。

事業価値じぎょうかち

EV(Enterprise Value)。事業そのものが生み出す価値。マルチプル法等で算定され、株式価値への変換にネットデット調整を行う。

ネットデットねっとでっと

純有利子負債。有利子負債から現預金等を差し引いた額。EVから株式価値を求める際に調整する。

年買法ねんばいほう

年倍法とも。『時価純資産+営業利益×年数(概ね1〜5年)』で価格の目安を出す簡便な手法。中小M&Aで広く使われる。

のれんのれん

営業権。買収価額と時価純資産との差額で、ブランド・取引先・技術・人材など無形の超過収益力を反映する。

マルチプル法まるちぷるほう

類似会社比較法。類似する上場企業の評価倍率(EV/EBITDA等)を対象会社に当てはめて価値を算定する手法。

EBITDAいーびっとだー

利払・税・減価償却前利益。おおむね『営業利益+減価償却費』で、設備投資や資本構成の影響を除いた収益力の指標。

DCF法でぃーしーえふほう

割引キャッシュフロー法。将来CFを割引率で現在価値に割り引いて評価する理論的手法。中小では事業計画の不確実性から参考扱いが一般的。

割引率わりびきりつ

WACC等。将来CFを現在価値に割り引く際の率。リスクが高いほど大きく、評価額は前提に左右されやすい。

修正純資産法しゅうせいじゅんしさんほう

時価純資産法。資産・負債を時価評価し直した純資産を株式価値とみなす手法。資産性の高い事業に向く。

時価純資産じかじゅんしさん

資産・負債を時価で評価し直した純資産。簿価との差(含み損益)を反映する。

取引事例法とりひきじれいほう

類似する過去のM&A取引の価格倍率を参考に価値を見積もる手法。

コントロールプレミアムこんとろーるぷれみあむ

支配権の取得に対して上乗せされる価値。経営権を握れることへの対価。

正常収益力せいじょうしゅうえきりょく

一時的・非経常的な要因を除いた、平常時に見込める本来の収益力。評価の基礎となる。

運転資本うんてんしほん

売上債権+棚卸資産−仕入債務。事業運営に必要な資金で、DDで水準の妥当性が確認される。

簿外債務ぼがいさいむ

貸借対照表に計上されていない債務(未払残業代・保証債務等)。買い手のリスク要因としてDDで確認する。

偶発債務ぐうはつさいむ

訴訟や保証など、将来一定の事象が起きると顕在化する不確実な債務。

報酬

レーマン方式れーまんほうしき

譲渡価格の規模に応じて手数料率が段階的に下がる成功報酬の算定方式(例:5%→4%→3%→2%→1%)。

完全成功報酬かんぜんせいこうほうしゅう

成約に至った場合にのみ報酬が発生し、着手金・中間金・月額が0円の料金体系。

着手金ちゃくしゅきん

業務開始時に支払う費用。成約の有無にかかわらず発生する。

中間金ちゅうかんきん

基本合意の締結等、一定の段階に達した際に支払う費用。

リテイナーりていなー

月額顧問料。アドバイザーへ毎月一定額を支払う報酬形態。

最低成功報酬さいていせいこうほうしゅう

成功報酬の下限額。レーマン方式の計算額がこれを下回る場合に適用される。

テールクローズてーるくろーず出典: 中小企業庁ガイドライン

テール条項。契約終了後の一定期間内に、紹介済みの相手と成約した場合に手数料が発生する条項。ガイドラインで対象・期間の限定が求められる。

専任条項せんにんじょうこう出典: 中小企業庁ガイドライン

契約期間中、他のM&A支援機関に同種業務を依頼しないことを約す条項。ガイドラインは不当に拘束しない運用を求める。

税務

譲渡所得じょうとしょとく出典: 国税庁

資産の譲渡による所得。譲渡価額から取得費・譲渡費用を差し引いて計算する。

申告分離課税しんこくぶんりかぜい出典: 国税庁

他の所得と分離して税額を計算する方式。上場・非上場株式の譲渡益はこの方式で課税される。

株式譲渡益課税かぶしきじょうとえきかぜい出典: 国税庁

個人株主の株式譲渡益には原則約20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課税される。

役員退職金やくいんたいしょくきん出典: 国税庁

退任する役員に支払う退職金。M&Aでは対価の一部を退職金に組み替えて税負担を抑えるスキームに使われる。

退職所得控除たいしょくしょとくこうじょ出典: 国税庁

退職金にかかる所得を計算する際の控除。勤続20年以下は年40万円、20年超は800万円+年70万円が目安。

みなし配当みなしはいとう出典: 国税庁

自己株式の取得等で、税務上配当とみなして課税される部分。スキームにより総合課税の対象となり得る。

消費税(事業譲渡)しょうひぜい出典: 国税庁

事業譲渡では、のれん・棚卸資産・建物等の課税資産に消費税がかかる。土地・有価証券・債権は非課税。株式譲渡自体は原則対象外。

制度

中小M&Aガイドラインちゅうしょうえむあんどえーがいどらいん出典: 中小企業庁

中小企業が安心してM&Aを行えるよう、支援機関等の行動指針を定めた中小企業庁の文書。第3版(2024年8月)で利用者保護が強化された。

事業承継・引継ぎ支援センターじぎょうしょうけいひきつぎしえんせんたー出典: 中小企業庁

各都道府県に設置された公的相談窓口。事業承継・M&Aの無料相談やマッチング支援を行う。

M&A支援機関登録制度えむあんどえーしえんきかんとうろくせいど出典: 中小企業庁

ガイドライン遵守等の基準を満たす仲介者・FAを登録・公表する中小企業庁の制度。補助金の対象は登録機関の支援に限られる。

経営者保証けいえいしゃほしょう出典: 中小企業庁

経営者が会社の借入を個人で連帯保証すること。承継の妨げとなりやすく、解除に向けた取り組みが進む。

経営者保証ガイドラインけいえいしゃほしょうがいどらいん出典: 全国銀行協会

経営者保証の提供・解除に関する自主的なルール。法人と個人の分離・財務基盤・情報開示の3要件が解除の判断材料となる。

事業承継特別保証制度じぎょうしょうけいとくべつほしょうせいど出典: 中小企業庁

一定要件を満たす事業承継時の借入について、経営者保証を不要にできる信用保証制度。既存保証付き借入の借換えにも使える。

事業承継税制じぎょうしょうけいぜいせい出典: 国税庁

後継者が取得した非上場株式等にかかる相続税・贈与税の納税を猶予・免除する制度。特例措置には期限・要件がある。

事業承継・M&A補助金じぎょうしょうけいえむあんどえーほじょきん出典: 中小企業庁

M&Aの専門家活用費用やPMI費用等を補助する制度。対象や枠は年度の公募要領で定められる。

特定事業者リストとくていじぎょうしゃりすと

悪質な譲受事業者の情報をM&A支援機関協会の会員間で共有する仕組み。不適切な買い手の排除を目的とする。

重要事項説明じゅうようじこうせつめい出典: 中小企業庁ガイドライン

契約前に手数料の算定根拠・専任条項・テール条項・利益相反等を説明・確認すること。ガイドラインが求める。

セカンドオピニオンせかんどおぴにおん出典: 中小企業庁

契約内容等について、他の専門家や支援センターに意見を求めること。ガイドラインはこれを許容する運用を求める。

出典・参考

※ 定義は上記の公的情報源に基づく一般的な解説です。税制・制度は改定され得るため、正確な内容は各出典・専門家でご確認ください。