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はじめての事業承継ガイド|進め方・期間・費用の全体像
「何から始めればいいか分からない」方へ。承継の選択肢から、流れ・期間・費用・公的支援まで、公的データを交えてやさしく解説します。
01なぜ今、「承継」が現実的な選択肢なのか
中小企業庁・経済産業省の試算では、2025年までに経営者が70歳を超える中小企業・小規模事業者は約245万社にのぼり、そのうち約半数の約127万社で後継者が決まっていないとされています。これらがそのまま廃業すれば、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性も指摘されてきました。
実際、帝国データバンクの調査では、2024年の全国の休廃業・解散は約6万9千件と集計開始以来の過去最多を記録し、そのうち約半数(51.1%)は直前期が黒字だったとされています。続けられたはずの事業が後継者不在を理由にたたまれている——これが「黒字廃業」と呼ばれる現実です。
一方で、第三者へ引き継ぐM&Aは着実に広がっています。後継者不在率は2025年に50.1%と7年連続で改善し(2017年は66.5%)、第三者承継は事業承継の有力な選択肢として定着しつつあります。「自分の会社が売れるなんて」と思っていた方こそ、一度確かめる価値があります。
後継者不在は約127万社・黒字廃業は約半数。「たたむ」前に「継いでもらえるか」を確かめる価値は大きい。
02承継先の3つの選択肢
事業承継には大きく3つの道があります。1つ目は親族内承継。子や親族へ引き継ぐ方法で、経営理念を受け継ぎやすい一方、後継者の意欲・適性や、株式移転に伴う相続・贈与税の負担が論点になります。
2つ目は役員・従業員承継(EBO/MBO)。事業に精通した社内の人材に託すため引き継ぎが円滑ですが、後継者に株式の買い取り資金がないことが多く、個人保証の引き継ぎが課題になりがちです。
3つ目が第三者承継(M&A)。社外の相手へ株式譲渡や事業譲渡で引き継ぐ方法で、後継者不在でも廃業を回避でき、雇用維持・売却対価の確保・個人保証からの解放といったメリットがあります。本コラムで主に扱うのは、この第三者承継です。
03全体の流れ(5ステップ)
第三者承継は、おおまかに次の5段階で進みます。①自社の価値を知る → ②匿名(ノンネーム)で掲載 → ③打診を受ける → ④NDAのうえ面談・交渉・契約 → ⑤引き継ぎ。
最初の一歩は「自社がいくらで売れそうか」を知ることです。近年は、オンラインで無料の価値診断を受けられるサービスも増えており、費用や登録の義務なく目安を把握できます。最初の一歩として有効です。
04準備しておくとよい資料
話が進むと、買い手は会社の中身を確認します(デューデリジェンス)。あらかじめ揃えておくと安心なのは、決算書(通常3期分)・確定申告書一式・株主名簿・許認可の資料・主要取引先との契約書・不動産関連書類などです。
これらは企業価値の算定や、承継後も事業が続くかの確認に使われます。完璧に揃っていなくても問題ありません。まずは手元にあるものから整理していきましょう。
05「いくらで売れる」の考え方(5つの手法)
M&Aの価格は、一つの計算式で機械的に決まるものではありません。実務では、複数の評価手法を組み合わせて多角的に試算し、株式価値ベースに揃えて統合するのが一般的です。中小M&Aでよく用いられるのは、①利益マルチプル法(EBITDA×業種別倍率)/②年買法(時価純資産+営業利益×1〜5年)/③修正純資産法(時価純資産)/④売上マルチプル法(売上×倍率)/⑤取引事例の参考レンジ、の5つです。
なかでも中小M&Aで出発点になりやすいのが年買法(年倍法)で、時価純資産+(営業利益×1〜5年)で目安を出します。一つの方法に偏らず複数を突き合わせることで、妥当なレンジを描けるとされます。
もう一つ有名な手法にDCF法(割引キャッシュフロー法)があります。将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて価値を求める理論的な方法で、大企業やスタートアップの評価では主流です。ただし中小企業のM&Aでは、信頼できる事業計画の作成が難しく、割引率などの前提次第で金額が大きくぶれるため、参考扱いにとどめるのが一般的です。
いずれにせよ、最終的な価格は買い手とのシナジーや交渉で上下します。算定結果は、あくまで「目安のレンジ」として捉えるのが現実的です。
中小M&Aでは5手法(利益・売上マルチプル/年買法/修正純資産/取引事例)で多角試算し統合するのが一般的。DCFは前提に左右されやすく参考扱い。
06期間・費用と、公的な支援
相手探しから成約までは、一般に半年〜1年程度をかけてじっくり進めるのが通例です。費用は、成約に至った場合にのみ発生する「完全成功報酬」が基本で、診断・仮登録は無料。途中でやめても費用はかかりません。
公的な相談先として、全国の「事業承継・引継ぎ支援センター」があります。無料相談やマッチング支援を行っており、同センターの令和6年度の第三者承継の成約は2,132件と過去最高でした。さらに専門家活用等を補助する「事業承継・M&A補助金」もあります(枠・要件は年度の公募要領で要確認)。まずは無料診断と、本コラム・用語集から始めてみてください。